【経営分析】腕時計のリシュモングループ決算を紐解く(その2 PL編-1)

さて、前回お伝えした腕時計3大勢力の一角、リシュモングループ。

www.setagayadezil.com

f:id:setagayadezil:20200522222457j:plain

超楽しく決算関連資料を読んでおります。

自分の興味がある商品群を扱う会社の決算書が年次報告書(Annual Report)を読むのは非常に楽しいですね。

前にも書きましたが、ぼくは元々全く財務・会計畑出身ではなく、体育会系出身の営業畑でした。財務も会計も良く分からないし、M&AとM&Mの違いも知らないし、EBITDAとエビのDNAの違いもまるで分かりませんでした。

診断士の勉強を始めてから、「あれ、財務とか会計とか面白いじゃないの」と思い始めました。仕事(本業・副業共に)にも完全直結しますし。

 

ということで、リシュモングループの決算資料、PDFで140ページ以上あります。さすがにこれは読む気にはならないので、決算説明プレゼンからまずは目を通します。

 

↓こんな感じの非常に分かりやすい資料。

f:id:setagayadezil:20200523223559p:plain

リシュモングループ決算説明プレゼン資料

 

今日はPLをまずは軽く分析してみましょう。

決算説明プレゼンをざっくりとエクセルに落とし込んでみます。2017とか2018は拾いきれない数字もあったので、リシュモングループのIRウェブサイトから過去資料を拾って確認してます。ちなみに単位は百万ユーロですね(今のレートで1ユーロ=117円強)。

 

f:id:setagayadezil:20200528195408j:plain
 

 

売上高

2020年度は前年比+2%と微増。まぁ第4四半期が新型コロナの影響を受けているので、悪くない仕上がりと考えて良いのではないかと思います。

決算説明資料でも書かれていますが、新型コロナの影響に加えて、昨年活発化した香港での暴動による影響等もあったようですね。

 

では売上高の中身も軽く見てみましょう。切り口としては、

  • 地域別
  • 販売チャネル別
  • 商品別
  • 事業別

で分類されてますのでこの通りに。分かりやすい説明です、株主目線。

 

f:id:setagayadezil:20200523224133j:plain

リシュモングループ2020年度売上高セグメント別情報(金額)

 

f:id:setagayadezil:20200523224415j:plain

リシュモングループ2020年度売上高セグメント別情報(比率)

 

地域別売上

まず少し驚いたのが、地域別分類で「日本」が1か国にも関わらず一つの地域として扱われていること。なんともありがたいことです。おそらく単一の国としては中国の方が売上規模は大きいのではないかと推測しますが(もしかすると違うのかな?)、いずれにせよリシュモンは日本を重要市場として位置付けている、ということですね。

 

売上割合で見てみると、アジア・大洋州が少し凹んで、アメリカ大陸が少し上がっています。アジア・大洋州は先ほど説明した香港での売上減少と新型コロナにより第4四半期(20年1-3月)での減少によるものですが、何よりもアメリカ大陸。

第4四半期も実は売上伸びてます。コロナはどうなった?南米も含まれているようですので、「コロナ?シラネ」みたいな感じで消費活動が継続されたのでしょうか?

f:id:setagayadezil:20200523224020p:plain

リシュモングループ2020年度売上 アメリカ大陸

 

販売チャネル別売上

こちらは動きが顕著です。オンラインが伸びてます。2018年度からスタートしており、2019年度・2020年度に一気に伸びてます。

これは2018年5月に子会社となったYNAP(YOOX NET-A-PORTER GROUP:イタリアのオンラインファッション小売業者)とWatchfinder(時計流通サイト)による貢献のようです。

www.wwdjapan.com

 

www.wwdjapan.com

 

事実2020年度決算では売上高が前年比+2%としながらも、オンラインを除けば減少とのことで、2019年度から本格化したオンライン戦略が売上を下支えしていると言えそうです。

 

商品別売上

このあとに事業別売上も出てきますが、こちらは完全に商品別。例えばリシュモン傘下のカルティエは時計もジュエリーもありますが(革小物もありますし)、時計は時計、ジュエリーはジュエリーとしてカウントされている模様です。

ブランド別の売上を積み上げたものは次の事業別になります。

商品別では2019年度/2020年度でそれほど大きな変動はありませんが、YNAP買収に伴うチャネル整備により、2019年度から服飾関係が一気に伸びていると読み取れます。今後オンライン販売が更に太くなれば、必然的に服飾比率が上がってくる可能性もありますね。

 

事業別売上

こちらも2019年度からオンラインが急激に伸びてきています。メゾン事業(カルティエ等のブランド)や時計専業事業(IWCやジャガールクルト等)の割合は相対的に落ちていますが、売上高の絶対額ではそうでもありません。

時計はやや微減ですが、メゾンはむしろ伸びていたりします。

 

売上高総利益

さて、売上高自体は+2%と増加していましたが、売上高総利益はどうでしょうか。

2019年度8,645百万€(以下単位省略)から2020年度8,211に減退。総利益率も62%から60%に減少しています。

事業別でどの事業が収益性が落ちているのかが分かればいいのですが、総利益時点での事業別データは開示されていませんでした(詳細の決算書にも総利益時点のものはナシ)。無念。

営業利益ベースで分析してみるしかないですね。

 

営業利益

さて、では本業の利益を表す営業利益。こちらはどうかと言うと、2019年度1,943から2020年度1,518に減益しています。

こちらは事業別の営業利益が開示されています。

f:id:setagayadezil:20200523224650j:plain

リシュモングループ事業別営業利益

メゾン事業・時計事業共に減益となっており、新型コロナの影響もあってか、中々厳しい状況にはあるようです。

一方、オンライン事業は売上は増加しているものの、営業赤字幅が増加しており、この改善が今後の課題となりそうです。

オンラインはECサイト中心となるので、ECサイト整備及び販促に関する経費の他、恐らく初期投資を行っているでしょうから、その当面はその償却負担もあると見られます。オンラインの売上をとにかく稼いで営業黒字にしていくことが必要ですね。

ちなみに決算書の注釈によれば、ソフトウェアは5年定額償却、開発費は10年定額償却とのことで、5年くらいすればソフトウェア償却負担が減るのかもしれません(もしかするとここから更にかかる、ということもあるかもしれませんが)。

 

それにしても、メゾン事業の営業利益率が30%前後というのは強烈な印象ですね。ラグジュアリーブランドなのでこのレベルなのかも知れませんが、追って競合他社(LVMHやスウォッチ)とも比較してみたいと思います。

 

次に向けて

長くなってしまうので、一旦営業利益でPLの前半編を終了したいと思います。

売上高から営業利益までザーッと見てきましたが、これだけでもかなり色々な事が分かりますね。

この後は実際の税後利益まで見ていきますが、2019年だけやたらと税後利益が高いことが分かります。

営業利益から税後利益の間で何かが起こっているわけですが、このあたりの説明は次回持越しとしましょう。

 

それにしても、見れば見るほど、決算書というのは面白いですね。

企業として説明したくない部分なんかも見えてきます。リシュモンは販管費の内訳の細かいところまでは全然説明したくない様子。又、地域別の営業利益なんかも開示してません。商品別営業利益も分かりませんでした。

 

めげずに次も頑張って分析してみます。

 

↓ポチっとYNAPとWatchfinder

にほんブログ村 資格ブログ 中小企業診断士試験へ
にほんブログ村

【ブックマークもお願いします!】