【経営分析】腕時計のリシュモングループ決算を紐解く(その4 BS編)

さて、趣味にどっぷりとハマりながら勝手に分析を呟く腕時計世界3大勢力の一角リシュモングループの決算紐解き、いつの間にか第4回です。

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これ何回続くんだろう、というかたぶんいくらでも続けられます。決算書読み始めると楽しくて止まらない、というやや変態気味ですんません。

 

ちなみに他の記事でも書いていますが、ぼく自身は財務・会計のバックグラウンドはあまりありません。そもそも財務を学び始めたのは診断士の勉強開始のタイミングでしたし。

診断士2次試験の事例Ⅳに登場する中小企業の財務データならそこまで悩まずに理解できるレベルですが、大企業や上場企業、ましてや今回取り組んでいるリシュモングループのように連結財務諸表バリバリのケースは色々と分からないことが出てきます。

 

本業の関係で多少の連結経営に関する知識はなくはないですが、英文決算書でIFRS用語がバリバリ出てくると中々分からない部分も多いです。そんなときはGoogle先生でガンガン検索します。大抵のことは調べればわかるもんです、便利な世の中。

こうやって新しい学びがあるのも、海外企業の決算書読み込みの面白いところですね。

 

さて、これまでPL(損益計算書)を色々と見てきましたので、今回はBS(貸借対照表)を見ていきましょう。

連結BSなので色々と診断士試験の勉強上は見慣れない用語や項目が出てきますが、まぁこの辺はあまり深くやるとキリがないので、今回はある程度流します。

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BSを4年分横並び

まずはリシュモングループウェブサイトのIR(Investors Relationship)にあるデータを拾ってきて、BSを4年分横並びにしてみました。

こんな感じ。

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PLというのはその企業が一定の期間(今回は年次決算なので1年間)を通じてどのようにお金を稼ぐことが出来たか、を表すものです。

一方のBSはその会社がどのように「経営していたのか」をある一点の時期(今回の場合は期末ですね)で切り取って見るものと言えます。

言わずもがなですが、BSは左に資産、右上に負債、右下に純資産と配置されます。

※実際の大企業決算書ではこのように横に配置されることは少なく、普通に縦に並んでいますが。

 

言い換えると、右側が資金調達で、左側が資金運用ということになります。他人から借りてきたお金(負債:返済しないといけない)と自分が持ってきたお金(純資産:株主への返済は不要)で色々なものに投資(資産)することで、売上を生み出し、収益を上げることを目指す(PLを大きくする)、というのが「経営」ということになります。

 

尚、リシュモングループの場合は資産規模(=総資産)が30,461百万ユーロですので、ざっくり3.6兆円規模となります。

日本の大企業で資産規模3.6兆円となると、電通グループや小松製作所の規模です。日本国内での資産規模だけで言うと109位と110位あたり。

なんだそこまで大きくないじゃん?と思うかもしれませんが、上位に入っているのは銀行や自動車、総合商社や通信業といった、明らかに資産規模が大きくなりがちな業種ばかりです。

リシュモンの場合はハイブランドの宝飾系なので、あまり日本には大規模な類似企業はありませんが、例えばファッションブランドだと考えれば、ユニクロのファーストリテイリング社の資産規模が1.9兆円程度なので、その倍近くにも及ぶイメージです。

 

資産の部

ではBSの右側、資産について軽く見ていきましょう。以下単位の「百万ユーロ」は省略で。

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流動資産

まずは流動資産。

  • 現金同等物は4,462。若干下がりつつあります。ちなみに2018年度は8,401と倍近くありましたが、これは2019年5月に実行されたYNAP買収用の資金を借り入れで手当てした為、一時的に膨らんだものと分析出来ます。実際に長期借入金が2018年度にドッカンと増えてますね。
  • 棚卸資産が増加傾向にあるのが気になるところ。ただ、これら運転資金に関連する項目の絶対額増加はそれほど重要ではなく、この増加が売上増に直結しているのか、という視点が重要です。※これは次回の財務指標で詳細ご説明します。
  • 公正価値金融資産(FVPL)という項目が大きめになっていますが、こちらは売買目的の保有株式と考えておけばOKです。
  • 流動資産全体では2020年度末は前年度末比減少、ほぼほぼ現金の減少額と同じレベルです。

 

固定資産

次に固定資産。こちらはまさに投資の結果です。土地や設備や建物、その他投資目的(長期保有目的)株式等が含まれます。

  • 有形固定資産は前年度とそれほど変わらず、安定しています。
  • のれんも無形固定資産も前年度とは変わりませんが、そもそも2019年度に激増しています。これは前回お話したYNAP子会社化に伴うのれんと無形固定資産時価評価によるものですね。
  • 使用権資産というものが2020年度にドカンと計上されています、これは詳細は省きますが、国際会計基準のIFRS16というルールで、リース資産の計上が必要となったとざっくり考えておけばOKです(その分、リース負債が負債側に計上されています)。その結果BS自体が肥大化する結果となり、固定資産回転率といった指標は総じて数値上は悪化してしまうことにはなります。
  • その他項目は細かいので割愛。ちなみに公正価値金融資産(FVOCI)というものがありますが、これは先ほど流動資産で説明したFVPLとは少し異なり、長期保有目的の株式投資、と考えておけばOKです。

 

負債の部

他人から調達してきた資金を表す負債も見てみましょう。

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流動負債

基本的には1年以内には返しましょう、という負債です。

  • リース負債が2020年度から計上されている以外は比較的安定していますが、全体的に流動負債規模が縮小しています。
  • 短期借入金も金額はそこまで大きくはないものの返済が進んでいる模様です。

ここはあまり論点ありませんでした。

 

固定負債

次に長期的な他人からの資金調達を示す固定負債。

  • こちらもIFRS16の影響でリース負債がドカンと増えています。
  • 長期借入金が大きめですが、これは2018年度に借り入れたもの。YNAP買収用の資金手当てですね。

こちらは長期借入金が論点のほぼ全てと考えられます。

 

純資産の部

最後に株主に帰属する純資産の部。経営者によっては考え方に差がありますが、企業というのは株主から資金を預かって経営しているわけで、基本的には「企業=株主のもの」と考えられています。

なので、純資産は株主に帰属する価値とも言えます(実際に連結会計はこの観点で処理されますし)。だからこそ、企業の最高意思決定機関は企業のオーナーである株主が意思決定する「株主総会」になるわけですね。

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  • 資本金はここ数年増資も減資もありません。
  • 自己株式取得後未消却のものがまだそれなりにあります。
  • 繰延ヘッジ損益と為替換算調整は話が細かくなるので割愛。
  • 利益剰余金は13,840と1.6兆円、なかなかにすさまじい金額です。

 

おわりに

ということで、BS4年分を「絶対金額」だけで読んでみました。

PLもBSも絶対金額という規模感で分析することも重要ですが、やはり経営分析・財務分析をする上で更に重要なのは、「適切な財務指標を用いて分析すること」です。

 

これがまさに診断士2次試験事例Ⅳの一番最初の設問で出てくる問題です。

財務指標はPLとBSを連動させて指標算出することで、収益性・効率性・安全性の3つの観点で企業の経営状態がどうなっているのかを分析する指標で、非常に使い古された感はあるものの、ざっくり状況を把握するには分かりやすい方法だと思います。

 

ということで、これまでやってみたPLとBSから、次回は財務指標を用いた経営分析をやってみたいと思います。

 

それにしても、IFRSを説明するサイトはどうしてもどれもこれもあんなに分かりにくいのだろうか?ぼくの理解力が足りない、というのもあるのでしょうが、理解させる努力も足りないと毎回思ってます。

 

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