【経営分析】腕時計のリシュモングループ決算を紐解く(その5 財務指標編)

さて、いよいよ5回目そろそろ終わり方も考えないといけません。

今までPLとBSの中身をちょこっと確認してきました。

 

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診断士2次試験で言えば、問題文(与件文)を読んで、財務データに目を通したあたりですね。試験始まって10分くらいのイメージでしょうか。

 

2次試験の第1問に必ず出てくる経営分析・財務分析問題、必ず得点源にしたい問いです。設問の問われ方は色々ありますが、大体オーソドックスなものは

 

設問1

  • (例1)課題と思われる指標を3つ
  • (例2)課題と思われる指標を2つ、優れていると思われる指標を一1つ

 

設問2

  • (例1)課題が発生している要因をXX字以内で述べよ
  • (例2)課題解決策をXX字以内で述べよ
っていうのが常套でしょうか。

 

ここでのポイントは、設問1で聞かれる「3つの指標」はバランスよく、収益性・効率性・安全性の3つの切り口で書いていくと分かりやすいです。

何よりこの3つの切り口で書くと、設問2の文章を組み立てやすいというものあります。

 

ということで、リシュモングループの決算書についても、この3つの切り口でまずは指標を計算してみましょう。

(バリバリの連結財務諸表なので、診断士2次試験事例Ⅳで出てくる単体財務諸表とはやや特徴が異なっていますが、連結ベースで計算してしまいます。最近では事例Ⅳでも連結ベースでも出たりしますしね)

 

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財務指標一覧

収益性・効率性・安全性の3つの観点(とオマケでROAとROE)で計算したのがこれ。

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2020年度決算での数値を過去との比較で見ていきます。前年と比べて良くなったものは青文字悪化したものは赤文字で分かりやすく書いています。

 

診断士2次試験では前年と当年の2年比較のみとなりますが、今回は4年分のPL・BSデータを用いたので、財務指標も4年分で見ていきましょう。

 

収益性

簡単に言えば「もうかりまっか?」です。収益性は分かりやすく、総利益率・営業利益率・税引前利益率・当期利益率を準備しておきますが、当期利益はあくまで全ての結果を表したものなので、これを以て財務分析の指標とすることはあまりないと思って良いかと思います。

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基本的には総利益段階でどうなっているのか、営業利益段階でどうなっているのか、税前利益段階でどうなっているのか、を確認するイメージです。

パッと見ると、どの指標も「悪化」しています。

 

総利益率も営業利益率も2017年度と比べると減少しており、収益性が低下していることが分かります。

総利益率は63.9%から60.5%に、営業利益率は16.6%から10.7%に、税引前利益率は14.7%から8.4%に、と軒並みダウンです。

もし2次試験的に一つの指標を挙げよ、ということであれば「営業利益率」かな、と思います。

以前にPLの分析として、事業別の営業利益を分析しましたが(事業別しか公開されていない模様)、既存のメゾン・時計事業の収益性がやや鈍化している中、オンラインで売上増にも関わらず営業赤字幅増となっている状況ですので、この点が大きな課題と言えるであろう、という背景です。

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次回もう少し財務指標分析について深く突っ込んで分析してみたいと思いますが、今回はとりあえず「営業利益」ということであたりを付けておきたいと思います。

(税引前利益に反映される金利負担増も怪しいですけど)

 

効率性

次に効率性。会社の資産を如何に効率的に使って売り上げを稼げているか、という観点になります。

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2020年度の売上高は前年比微増(+2%程度)なので、資産圧縮しない限りは回転率はあまり上がらない、という計算になります。

 

パッと見てみると、固定資産回転率が17年度の1.9回から20年度は1.0回にほぼ半減しています。一方で、有形固定資産回転率は同期間で4.2回から5.1回に増加し効率性アップ

これはひとえに19年度に買収を実行したYNAP株式(持分法適用先から子会社に)の買収時のれんと無形固定資産が「固定資産勘定」にドカンと計上されたことによります。

(その他IFRS16による使用権資産(リース)が固定資産の20年度から計上されたことも効いている模様です)。

詳細分析は次回にしたいと思いますが、結局まだYNAP買収による売上増加効果が目に見えた形で出てきていない、ということが言えるかと思います。

とはいっても、M&Aで買収翌年度からガンガン利益が上がるなんていうのはレアケースなので、もう少し長い目で見ていく必要があるでしょう。

ということで、ここで一つ選ぶとすれば、「固定資産回転率」になるかと考えられます。

 

安全性

最後に安全性。こちらはBSの中で計算が完結しますが、その企業がどれだけ安全・健全なのかを示す指標です。

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こちらも赤文字ばかり。19年度に比べて悪化している指標が多いようです。

全体的に負債への依存度が高まっている印象で、17年度と比べると顕著です。

例えば負債比率は17年度29.8%から20年度77%に。自己資本比率も77%から56.3%に。

と言っても、自己資本比率まだ56%もあるわけです。かなり自己資本で賄えている印象ではありますが、このあたりは同業他社(LVMHやスウォッチグループ)とも追って比較分析してみることにしましょう。

詳細は次回以降分析するとして、ざっくりここで読み取れるのは、19年度のYNAP買収に向けて18年度に大きく借入を行ったことから、借入依存度(負債依存度)が高まったということですね。

一方で、流動比率や当座比率は17年度に比べれば悪化しているとは言え、いまだ100%を大きく上回る数値となっていることから、短期的な安全性は十分に確保できていると言って差し支えないのではないかと思います。

 

リシュモンの場合は上場企業ですので、理論上は借入が増加すればするほど企業価値は高まるハズで(診断士1次試験の財務・会計で出てくる頻出論点ですね。「MM理論」)、株主からは歓迎されているハズなのです。

株主の立場からすれば、株主コストよりも調達コストが安い負債調達により、YNAP買収という投資を行って将来の収益化を目指してくれることで、企業価値の向上、つまり株式価値の向上(Capital Gain)を期待することになります。勿論、Capital Gainと同時に、会社が収益を上げた結果としての株主への配当還元(Income Gain)も同じくらい期待します。

 

ということで、一つ指標を挙げるとすれば、「負債比率」でしょうか。

自己資本比率でも間違いではないのですが、借入金増加という負債に関する論点がメインとなりますので、「負債比率」を選択してみます。

自己資本比率はどちらかというと、内部留保(利益剰余金)が中々たまらずに薄いことや、過小資本でバランスが悪い場合に課題指標として使いますので、悪化したとは言え56.3%も自己資本比率があるリシュモンでは、課題指標にはなじまないような気もします。

 

おわりに

収益性・効率性・安全性の3つの観点で計算し、おのおの課題と考えられる指標を挙げてみました。これである程度バランスよくリシュモングループの経営状況を数値面で見ることが出来たのではないかと思います。

 

次回は今回ピックアップした課題となる財務指標を基に、更なる分析をかけてみたいと思います。その上で、これら課題が発生した原因を洗い出し、可能であれその対応策を机上の空論ベースで論じてみたいところです。

 

リシュモン分析も次で6回目。何やら愛着がわいてきましたね、リシュモンに。

ということは次に買う時計も自ずと絞られてきたわけで・・・(ぶつぶつ)

 

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