【経営分析】腕時計のリシュモングループ決算を紐解く(その6 財務指標編-2)

診断士試験で言えば、第1問の設問1で財務指標を3つ選んだのが前回までですね。

5回も記事化して、まだこれだけしか終わってないのか、という感じですが、腕時計の世界3大勢力の一角ということで、完全に趣味の世界に入っているからですね。

趣味は盲目、恋も盲目。

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さて、今回で財務指標編を完了させます。

イメージとしては診断士2次試験第1問の設問2です。

設問1で選択した3つの「課題となる財務指標」を基に、これらが表す経営状況を端的に分析してみたいと思います。

 

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課題となる財務指標

前回までの分析で、収益性・効率性・安全性の3つの切り口で各指標を見てみました。

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その前のPL分析やBS分析での内容も踏まえると、3つの課題となる指標と2020年度の数値は、

  • 収益性:売上高営業利益率 / 10.7%
  • 効率性:固定資産回転率 / 1.0回
  • 安全性:負債比率 / 77%

にするのが、リシュモングループの状況を表すには分かりやすいのではないかと考えられます。

なぜこの指標たちを選んだのか、というのがまさに「経営状況を表す表現」ということになりますね。

 

2020年度決算から見る経営状況

では先ほど選んだ売上高営業利益率・固定資産回転率・負債比率について、どのようなことが背景で、これら指標が悪化してしまったのかを考えてみます。

 

売上高営業利益率

収益性悪化の要因は一般的には競争激化だったり、商品・サービスの陳腐化だったり、そもそもの市況悪化による売上減少だったりと様々です。

リシュモンの場合は決算説明のプレゼンテーションにもありますが、やはり第4四半期に新型コロナの影響で売上がドカンと落ち込んだことが一つあります。

売上が落ちると変動費に該当する費用はそのまま落ちるわけですが、固定費に該当する人件費や店舗維持費等の管理費、減価償却費等は変わらない為、その分収益を圧迫することとなります。このあたりは定番のEVP分析に該当します。

決算説明資料によれば、売り上げの51%が「Retail=小売」となっていますので、これらは直営ブティック等でのB to C販売と解釈できそうです。これらはまさに自前固定資産であり、直接雇用人件費になるハズなので、「固定費」に他なりません。

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これに加えて、2019年度に超大型案件として買収を行ったYNAP(とWatchfinder)を軸としたオンライン事業が売上には貢献しているものの、営業利益ベースで赤字幅が広がっていること、及びその裏で管理コストの中にはおそらくYNAP買収による無形固定資産の償却費用が計上されているであろうことから、営業利益面が凹んでいるような状況と考えられます。

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新型コロナによる市況の悪化は外部環境なので中々コントロールしにくい部分はありますが、オンライン展開を拡大させ、新型コロナに関係なく非対面型の販売チャネルを更に拡充させ効率的なオペレーションを展開することで、営業利益増加を狙っていく、というのが方針になりそうです。

 

固定資産回転率

こちらは2017年度に1.9回だったものが、2020年度は1.0回に悪化しています。2019年度の時点で既に1.3回に悪化していますね。

一方の有形固定資産回転率は2017年度2.0回に対して、2020年度2.1回なのでやや改善となっていることを見れば、店舗施設等の有形固定資産はうまく活用出来ていると考えても良いかと思われます。

では何が影響しているかと言えば、こちらも「2019年度のYNAP・Watchfinder買収に伴うのれんと無形固定資産」に他なりません。

端的に言えば、相当の金額を投じて買収し、YNAP株式を時価評価した結果計上されたのれんと無形固定資産ですが、まだこれらをカバーできるような売上増加効果が出始めていない、ということになります。

但し、前回の記事でも書きましたが、買収後即座に売上貢献・収益貢献できるようなケースは中々ありませんので、中期的視点(例えば2年-3年スパン)で、この大型買収が正しかったのかどうかを評価していく必要があるでしょう。

来年以降の決算が楽しみですね。

 

負債比率

安全性を示す指標ですが、流動比率や当座比率はかなり高い水準ですし、自己資本比率も56%もあるので、リシュモングループは企業として安全性に課題がある、という訳ではない状況にあります。

あえて言うとすれば、2017年に29.8%であった負債比率が2018年には75%になり、2020年は77%と高い水準になっていますので、これを「課題指標」としています。

2018年度に長期借入金が3,800百万ユーロ(4,400億円規模)増えており、これは2019年度の買収の準備ですね。

実際に2019年度はYNAP買収で3,200億円支払と報道されたりしていますので、買収金額に相当する資金を借入調達したことになります。

現時点では現金保有高は4,400百万ユーロ(5,100億円規模)ありますので、負債比率は増加したとは言え、返済能力もあるような状態ですので、今後も返済原資をしっかりと稼ぎ出すことが出来れば、あまり問題にはならないものと考えられます。

強いて言うとすれば「借入依存度が高まっている為、中長期視点での返済原資に配慮したキャッシュフロー経営を行う必要がある」程度かと思われます。

 

まとめると

ということで、収益性・効率性・安全性の3つの指標の裏にある経営状態を分析したところで、これを一気に纏めてみます。

 

  • 収益性の観点では、新型コロナの影響による売上インパクト、及び新規取組であるオンライン事業での経費増により営業利益率が減少。効率性の観点では大型買収案件に伴うのれんと無形固定資産計上により固定資産回転率が悪化。安全性の観点では、買収案件資金調達を長期借入金で賄ったことから負債依存度が高まり負債比率が悪化。
  • リシュモングループは買収事業でもあるオンライン事業への注力を図り、売上高拡大による営業利益増加と資産効率の向上、中長期的な返済原資を視野に入れたキャッシュフロー経営を行うことで、収益性・効率性・安全性の向上を目指すべきである。

 

診断士試験のように字数制限がないので、少し細かめに書いてみましたが、基本線としては買収したオンライン事業をドンドン伸ばしていく必要があるよね、ということが決算データからも見えました。

 

さて、まだまだやり残しありますが、気が向いたらベースで記事化していきます。

残るは、キャッシュフローの分析と競合他社(LVMHやスウォッチグループ)との比較でしょうか。こちらも適宜やりますので、そのうちということで。

 

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